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熱中症対策が義務化~企業が取り組むべき内容とは~
2025.08.01
2025年6月1日から職場での熱中症対策が義務化になりました。熱中症対策はこれまで塩飴や飲料水を備えることを義務付けられていましたが、努力義務だったため法的責任はありませんでした。今回の義務化によって法的責任が生じるほか、『報告体制の整備・重篤化を防ぐための実施手順の作成』を新たに行わなければいけなくなりました。
これまで『努力義務』とされていた対策が『義務』に格上げされたのはなぜなのでしょうか?
本記事では、熱中症対策が義務化した背景と、現場での対応策について解説します。
熱中症対策義務化の背景
熱中症による死亡災害の増加、、その原因とは?
近年、日本では夏になると40℃近い気温が珍しくなくなり、異常気象が日常となりつつあります。気候変動の影響で高温多湿の日が増え、屋外作業や空調のない現場では、熱中症のリスクが急激に高まっています。
実際に令和5年は熱中症の死傷者数が1000人を超えており、また死亡災害も2年連続30人以上発生しています。


出典:職場における熱中症対策の強化について (厚生労働省)
下図を確認すると、建設業・製造業・運送業での熱中症死傷者数が特に多い為、これらの業種では特に注意が必要です。

出典:職場における熱中症による死傷災害の発生状況 (厚生労働省)
これまでも国は「熱中症を予防しましょう」という呼びかけを行い、企業に対して一定の指導をしてきました。しかし、現場では「忙しくて休憩が取れない」「水分補給が徹底されていない」など、実効性に乏しい状況が続いていました。
つまり、『努力義務』では対策が現場に浸透せず、予防できるはずの事故が防げていないという課題があったため、今回熱中症対策の義務化に踏み切りました。
現場における対応
早期発見・対応で重篤化を防ぐ
熱中症対策義務化の対象となる作業内容は以下の通りです。
(注1)WBGT値とは
湿球温度、黒球温度、乾球温度を基にした暑熱環境による熱ストレスの評価を測る指標
会社がどのような対策を行わなければいけないでしょうか。
1. 作業環境管理
(1)WBGT値の提言等
高温多湿の環境では、人間の体温調節機能が働きにくくなり、熱中症のリスクが高まります。作業環境の温湿度条件に基づき、WBGT値を適切に管理し、必要に応じて作業環境の改善や作業の中止を提言します。

出典:職場における熱中症対策の強化について (厚生労働省)
(2)休憩場所の整備等
作業現場には、定期的な休憩が取れる場所が必要です。特に暑い環境では、体温を下げるために涼しい場所で休息を取ることが重要です。また、休憩時間を確保することで、作業員が疲労を感じにくく、効率的に作業を行うことができます。
2. 作業管理
(1)作業時間の短縮等
作業時間が長いと熱中症のリスクが高まるため、作業時間を適切に管理し、暑い環境下では作業時間の短縮や休憩の増加を推奨します。また、作業の負担が軽減されるような工夫も大切です。
(2)暑熱順化
暑熱順化とは、体が高温環境に慣れる過程を指します。作業者が暑い環境で働く際、急激な暑さに曝されることを避け、少しずつ体を順化させていくことで、熱中症のリスクを低減させます。
(3)水分および塩分の摂取
暑い環境下では、体から水分や塩分が失われやすいため、こまめに水分や塩分を補給することが重要です。特に、汗をかきやすい作業環境では、電解質を含んだ飲料を摂取することが推奨されます。
(4)服装
暑い作業環境下では、通気性の良い服装を選び、過度な衣服を避けることが大切です。また、作業内容によっては、適切な防護具を着用する必要がある場合もあります。
(5)作業中の巡視
作業中に作業員の体調を確認するために定期的な巡視が必要です。これにより、熱中症の早期発見が可能となり、迅速な対応ができるようになります。
3. 健康管理
(1)健康診断に基づく対応等
作業員の健康診断結果を元に、作業環境や作業内容を調整します。健康状態に問題がある場合、適切な治療や休養を取り入れることが大切です。
(2)日常の健康管理
日常的に作業員の健康管理を行い、特に高温作業時には体調が崩れないよう注意します。定期的に体調確認を行うことで、熱中症の予防にも繋がります。
(3)労働者の健康状態の確認
作業前後や休憩中に、作業員の健康状態をチェックします。熱中症の初期症状を見逃さないために、注意深く確認することが求められます。
(4)身体の状況の確認
身体の状態が悪化している場合、速やかに作業を中止したり、治療を受けさせることが重要です。特に、息切れや体のだるさ、頭痛などは熱中症の兆候として注意が必要です。
4. 労働衛生教育
(1)熱中症の症状、予防方法
労働者には、熱中症の兆候(頭痛、めまい、吐き気、筋肉のけいれんなど)や予防方法(適切な水分補給、服装、休憩の取り方など)について教育を行います。これにより、早期に自己管理や他者のサポートができるようになります。
(2)緊急時の救急処置
万が一熱中症が発症した場合の救急処置についても、労働者全員に教育を施します。救急処置には、冷却や水分補給、必要に応じて医療機関への連絡方法などが含まれます。
(3)熱中症の事例
過去の事例を取り上げ、どのような環境や状況で熱中症が発生したかを学びます。これにより、同様の事態を避けるための実践的な対策を講じることができます。
参考:職場における熱中症対策の強化について
まとめ
熱中症対策は企業の責任であり社会の課題
熱中症対策の義務化は、単なる法改正ではなく、働く人の命と健康を守るための社会的な転換点です。
企業にとっては「負担」に感じられるかもしれませんが、従業員を守ることは労働環境の信頼性を高め、生産性の向上や人材定着にもつながります。
これからの時代、「熱中症を出さない企業づくり」こそが信頼される会社の条件となっていくでしょう。
名正運輸の取り組み
名正運輸では、熱中症対策として以下の取り組みを行っております。
・スポットクーラーの設置
・空調服の支給
・水分・塩分補給としてウォーターサーバーや塩飴、塩分タブレットの用意
・熱中症対応フローを各営業所で掲示
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|---|---|---|
| 空調服の着用 | 倉庫内にスポットクーラーの設置 | 塩飴、ウォーターサーバーの用意 |
名正運輸は、暑い中働いていただいている全従業員の健康管理を行い、安全第一で作業を進めて参ります。




